STATEMENT



内なる物語を追い求めて
 私は旅を通じて、その場所でその時にしか出会えない、特別な一瞬を写真に収めるため、様々な被写体を追いかけています。
 私が追い求めるのは、単に美しいだけの風景ではありません。光や時間、人々の営みや生き物の気配といった、無数の偶然が完璧に調和した一瞬にだけ現れる、極限の光景です。そうした奇跡の巡り合わせと呼ぶべき光景の背景には、必ず知られざる物語が潜んでいます。そしてその物語には、この複雑な社会を生き抜くための本質的な思考が宿っていると、私は信じています。
 今の時代、インターネットやSNSには情報が溢れ、私たちは常に新しい変化への対応を迫られています。その便利さの裏側で、古くから大切にされてきた考え方や、自然の摂理から学べることを見失いがちです。
 私にとって旅とは、そうした日常から意識的に離れ、普段は意識の底に沈んでいる、もう一人の自分と出会うための時間です。簡単に、それらしい「答え」が見つかる時代だからこそ、旅先で自分の目で確かめ、頭でじっくり思考し、感性を豊かにすることが、より重要になっていると感じます。
 私が追いかけている被写体の一つに、水没林があります。
 水に沈むという運命を受け入れながらも、季節や時間と共に姿を変え、力強く生き続ける木々。特に冬、氷結した湖面に佇むその姿は、分刻みで表情を変え、見る者を圧倒します。その姿そのものが、厳しい環境の中でも変化を受け入れ、しなやかに生き抜くことの意味を、私たちに静かに語りかけてくるのです。
 こうした光景が持つ奥深い意味を捉え、その「これだ」という表情を引き出すには、カメラの技術だけでは不十分です。
 その場所に何度も足を運び、被写体を深く知ろうとすること。そして、納得のいく一瞬に出会うまで、時に年月を重ねながら探求を続けること。こうした地道な積み重ねがあって初めて、単なる記録を越えた、メッセージ性のある作品が生まれるのです。
 そうして生まれた作品が目指すのは、それらが語りかける物語を通して、鑑賞者が知識や情報だけでは得られない「生きる上で本質的な問い」と向き合い、深く思索する機会を創り出すことです。
 これからどんな被写体を撮るにしても、この想いは変わりません。
 私の作品が映し出す情景が、鑑賞者一人ひとりが自らの在り方を見つめ直し、未来を描くための『きっかけ』となることを願っています。

©︎ 2022 – 2026 Takahiro Gamou Photography.

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